重要事項説明は大事です
2021年10月19日
重要事項説明でわかる貸主のこと
契約締結前に宅地建物取引士によって行われる、重要事項説明。
今回は、重要事項説明のなかでも貸主・所有者についてクローズアップしていきます。
重要事項説明書の貸主情報
契約前に必ず目を通すことになるのが、重要事項説明書です。
宅建業法第35条では、物件に関する重要な事項を記載した書面を交付し、契約締結前に宅地建物取引士によって借主に説明することを義務付けています。
この重要事項説明書に貸主名が書かれているので、どんな人(法人)から物件を借りるのかがわかります。
そしてもう一つ大事なのは、「登記簿に記録された事項」にある所有者に関する記載です。
「貸主と所有者って同じじゃないの?」と思うかもしれませんが、必ずしも貸主と所有者はイコールではありません。
共同で所有しているために所有者が複数名いて、その中の一人が貸主になることもあれば、所有者は個人、貸主は所有者が代表を務める法人ということもあります。
また、サブリースといって、不動産業者などが一括で借り上げて転貸(又貸し)する形態も多く、そういった場合はサブリース業者が貸主となります。
このように、これから借りようとしている物件の所有者・貸主のことが、この重要事項説明書で知ることができます。
登記簿謄本の記載事項でわかる所有者情報
重要事項説明書の「登記簿に記録された事項」に所有者の記載があることは先にお話ししました。
では、その登記簿についても少し見ていきたいと思います。
登記簿謄本とは
登記簿謄本とは、法務局で管理している登記の記録の写しのこと。
昔は台帳で管理していたので、登記簿と呼んでいましたが、現在では電子化されて登記記録というデータになり、それを出力する形に変化したため、
正確には「全部事項証明書」と言います。
法務局まで足を運ばなくてはならなかった登記簿謄本でしたが、今はインターネットで取得することができるようになりました。
権利部(甲区)の記載で注意すること
所有権に関する事項について、「差押」の登記がされていないか、注意しましょう。
「差押」の登記後、賃貸借契約を結んだ場合は、「それを承知の上で契約をした」と考えられるので、実際に競売などで取得した新しい所有者が明け渡しを要求した場合は、それに従わなければなりません。
権利部(乙区)の記載内容
乙区には所有権以外の権利に関する事項が記載されています。
よくあるのが、抵当権設定、根抵当権設定です。
抵当権とは、金融機関などがお金を貸す際、土地や建物などを担保に設定し、債務が弁済されないときに、その設定したものの競売代金から優先して弁済を受けることができる権利のことです。
事務所ビルの場合は、建物を建てるためにお金を借り、そのビルを担保に設定する場合が多く、お金を貸す金融機関側からすれば、「お金を貸したんだから、返せなかったらその建物を回収しますよ」というのはごくごく自然なやり取りと言えます。
何千万ものお金を現金で出せる人は少ないですから、担保になっているからと言って危険ということはありませんが、抵当権者が銀行ではなく消費者金融などである場合には注意したほうがいいかもしれません。
根抵当権とは、すでに存在する特定の債権を担保する通常の抵当権に対して、継続的な取引において不特定多数の債権を担保するものです。
例えば、ビルを建てる費用の他にビル補修の為にお金を借りたり、新規事業の立ち上げのためにお金を借りたりと、様々なことで金銭の貸し借りが行われるとします。
通常の抵当権だと、お金を借りる都度、抵当権設定登記をし、返したら登記の抹消手続きをするということを何度も繰り返すことになり、手続きが面倒で、費用もかかります。
そこで、極度額(限度額)を設定し、その額までであれば何度でも借りたり返したりを繰り返していいというのが、根抵当権です。
どちらも、借主にとって状況はあまり変わりませんが、抵当権の場合、いくら借りたのかが明白で、抹消登記によりお金を返したことがわかるのに対し、根抵当権の場合は、現在いくら借りているか、返しているのかが全くわからないところが少々不安な点といえるかもしれません。
抵当権が付いていることのデメリット
では、所有者がお金を返済できなかったとき、お部屋を借りている人(借主)はどうなるのでしょうか。
所有者が借りたお金を返済できなくなった場合、抵当権者は担保となっている物件を競売にかけ、その競落代金によって債務を回収することになります。
賃貸借契約を交わし、物件の引き渡し時に既にその(根)抵当権が設定されていた場合、借主は物件を競落した新しい所有者に、「お金を払って借りているんだから!」と主張することができません。
新しい所有者が新たな賃貸借契約をすることを拒否した場合、そのまま借り続けることはできず、6ヶ月の間に借りているお部屋を明け渡さなければならないのです。
もちろん、猶予期間中、部屋を明け渡すまでは新しい所有者に賃料相当額を支払わなければなりません。
そう頻繁に起こることではありませんが、デメリットとして、頭に入れておかなければならない重要な事項といえます。
転貸借の場合
所有者と貸主が違う場合の一つ、転貸借のケースについて、見ていきたいと思います。
転貸借とは、借りているものを第三者に貸す、又貸しのことです。
AさんがBさんに物件を貸し、BさんがAさんの承諾を得て、Cさんに貸す、
ということなのですが、Cさんに不利な場合があります。
AB間の契約が、債務不履行等で解除になったとき、
Aが返還を求めたときには転貸借関係が終了するということです。
Cの立場になるということであれば、こういったリスクがあることを知っておきましょう。